11ac対応Atermの最新フラッグシップモデル(最上位機種)である「WG2600HP2」。業界最速※の実効スループットを実現したこの機種は、NEC独自の先進技術とアイデアが詰まった新アンテナシステムを搭載しています。
この新アンテナシステムはどんな経緯で生まれたのか。普段あまり語られることのない“ルータ開発”の裏側を、当社のミスター・アンテナこと三浦氏の開発秘話を交えてご紹介します。
新アンテナシステム開発の布石となったのは2013年3月、11acという通信規格の登場とともに発表した初代11acフラッグシップモデル「WG1800HP」に遡ります。Atermが追い求めたのは、当時の家庭用ルータで最速となる1.3ギガbpsの通信性能。しかも、アンテナを含めどこよりも小さな本体で実現すること。この難題をクリアできたのは、高度なアンテナ技術あってこそでした。
11acの正式制定からすでに1年あまりが経ち、11acはWi-Fi対応製品の主流となっていました。
次の11acフラッグシップモデルを開発するにあたり、課題となったのは[μSRアンテナ]をさらに進化させることでした。
2015年5月に発表された「WG2600HP」には、11ac技術である[MU-MIMO]を採用しました。空間多重により同時通信が可能となり、複数台のWi-Fi端末を接続しても速度が落ちません。
Atermシリーズの特長はアンテナを内蔵したコンパクトデザイン。しかし、コンパクトなデザインを維持しながらMU-MIMOを採用するのは難問でした。いくら[μSRアンテナ]が小さいとはいえ、基板のスペースは限られたもの。そこにアンテナを増設するというのですから。
どうにかできないものかなぁ・・・
さらに懸念はもう1つ。Atermはコンパクトであるが故にアンテナ間の距離が短く、電波干渉が起きやすいという課題がありました。電波干渉を低減するためには、アンテナ同士を離す、あるいは同じ効果を得られるまったく新しいアイデアが必要でした。
アンテナ間の分離(アイソレーション)を確保することで電波干渉を低減できれば、より高速な通信ができるのではないか。その発想を具現化したのが[アイソレーション・アンテナ]と[ピン・ダイポールアンテナ]という2つのサブアンテナの搭載です。
携帯電話・スマートフォン、スマートメーター、ホームルータ・モバイルルータの開発に従事。電波環境の研究に余念がなく、社内ではミスターアンテナの異名を取る。 毎年夏は母校の応援で球場にかけつける高校野球好き。休日は「子どもと遊ぶ」のが趣味の良きパパでもあります!